
保育ICTラボ事業では、保育現場の業務改善やICT活用を、往還型研修と巡回支援を組み合わせながら進めています。
今回は、国が整備を進める保活情報連携基盤と保育施設管理プラットフォーム(以下、政府基盤)の導入・活用をテーマに、福岡県宗像市のかとう保育園を訪問し、第1回の巡回支援を行いました。
今回の訪問目的は、2つのシステムをその場で使いこなすことではありません。
園の現在の仕事の流れを確認し、新しい仕組みとの違いを見つけ、どこからなら無理なく試せるかを一緒に考えることです。
政府基盤は機能が順次整備されている段階にあるため、完成した正解を伝えるのではなく、現場で実際に触りながら、使いやすさと課題の両方を確かめていきます。
第1回訪問は、「使う前の整理」から
訪問ではまず、今回の支援の位置づけと、政府基盤の全体像を共有しました。保活情報連携基盤は、保護者による園見学の予約や施設情報の確認などを支える仕組みです。保育施設管理プラットフォームは、自治体と施設の間で行う給付請求や通知などの業務をオンラインで行うことを目指しています。
一方で、システムが用意されただけでは、すぐに日々の業務へ置き換えられるわけではありません。誰が入力するのか、どの情報をどこで直すのか、自治体の設定と園内の役割をどう組み合わせるのか。こうした運用の整理が、実際に使い始める前の大切な準備になります。
情報の流れを確認し、二重入力を減らす
2つの政府基盤では、ここdeサーチに登録された園名、住所、電話番号などの施設情報が、ほかの仕組みへ連携される想定です。しかし、すべての情報が自動で入るわけではなく、自治体や園が追加する項目もあります。また、連携元の情報と各システムで入力した情報が混在すると、どの画面で修正すればよいか分かりにくくなることがあります。
園からは、複数のシステムに、似た情報を入力する負担や、全体像が見えにくいことについて率直な意見が寄せられました。これは一つの園だけの問題ではなく、政府基盤を現場へ定着させるために、情報の元と更新場所を分かりやすく示す必要があることを教えてくれます。支援では、機能の説明だけでなく、情報がどこから来て、誰が確認し、どこへつながるかを一緒に整理していきます。
給付請求は、現在の方法を残したまま比べてみる
保育施設管理プラットフォームについては、宗像市で現在行っている給付請求と、新しい仕組みで想定される職員配置や加算の入力方法に違いがあることを確認しました。この違いを整理しないまま移行すると、入力結果と市の確認結果が一致せず、加算算定や請求確認に影響する可能性があります。
そこで、現在の請求方法をすぐに止めるのではなく、通常の請求を行った後に、同じ月の情報を試行環境へ入力して比較する進め方を検討しました。手順や結果の違いを見ることで、入力に必要な情報、分かりにくい項目、自治体との調整が必要な部分が具体的になります。最後まで操作できなかった場合も、どこで止まったかを記録すれば、それ自体が改善につながる大切な検証結果です。
園見学予約も、公開前の小さな試行から
かとう保育園では、現在、園見学の申込みを主に電話で受け、保護者と日程を調整しています。一方で保活情報連携基盤では、園が受付可能な日、時間、人数を設定し、保護者が予約する流れが想定されています。
新しい予約方法を活用するには、予約枠の作り方だけでなく、変更やキャンセルがあった場合の連絡、申込み通知を確認する担当、保護者向けに公開する時期などを決める必要があります。まずは公開しない状態で予約枠を一つ設定し、園内で申込みから対応までの流れを試す。ここでも、小さく試してから運用を整える方法をとります。
現場から見えたこと
今回の対話から見えてきたのは、政府基盤の定着には、操作方法だけでなく「現在の仕事とどうつなぐか」という視点が欠かせないことです。園からは、複数システムの関係が見えにくいこと、給付請求の考え方が現在の運用と異なること、現場の配置実態に合う形で検証したいことなどが共有されました。
こうした声は、導入に後ろ向きということではありません。仕組みを実際に役立つものにするために、現場が感じる違和感や疑問をそのままにせず、一つずつ確かめる姿勢です。使えた事例だけを集めるのではなく、分かりにくさやつまずきも含めて整理し、自治体や国へ戻していくことが、今回のモデルで大切にしている役割です。
小さな試行を、次の改善につなげる
今後は、宗像市と試行環境や登録データの状態を確認した上で、月次請求や園見学予約を無理のない範囲で試します。次の訪問では、操作が完了したかどうかだけでなく、どこが分かりやすかったか、どこで迷ったか、現在の方法と比べて何が変わったかを振り返ります。
当協会では、システムを入れることをゴールにせず、保育現場と自治体の双方にとって続けられる運用をつくることを目指しています。かとう保育園、宗像市との実践を重ねながら、政府基盤を現場の業務へつなぐために必要な支援の形を整理していきます。
支援者
三好 冬馬
一般社団法人 保育ICT推進協会 代表理事
保育所で保育士として勤務しながら、地域の保育施設におけるICT導入と活用に携わってきました。保育現場での実体験をもとに、園や自治体の業務改善、ICT活用、人材育成を支援しています。
保育ICT人材育成・業務改善支援に関するお問い合わせ
保育ICT推進協会では、自治体と保育施設が連携し、地域全体でICT活用と業務改善を進めるための支援を行っています。
管内施設を対象とした往還型研修、専門家による巡回支援を企画したい自治体の方もご相談ください。地域の課題や既存の取り組みを伺いながら、保育ICT人材の育成、園内の推進体制づくり、具体的な施策をどのように組み合わせるか、一緒考えます。
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