【愛媛県松前町】保育ICTラボ事業における取組① ICT活用を自治体から推進|ICT未導入の公立園で、スムーズな導入と定着の実現へ

愛媛県松前町では、令和7年度に公立4園で保育ICTシステムの一斉導入を行いました。複数園での円滑なICT導入と安定的な定着の実現を目的に、「保育ICTラボ事業」に取り組んでいます。

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ここでは、これまで実施した施策の詳細と、取組参加者を対象にしたアンケート結果をご紹介します。

(1)初回研修

保育現場におけるICT活用の意義を共有し、導入促進の基礎的な理解を深めることを目的として、施設関係者を対象に研修を開催しました。

参加者数:施設関係者59名・自治体職員4名

初回研修では、国の動向やICT導入の本来の目的を踏まえながら、

  • ICT導入を目的化しないための業務改善の考え方
  • 施設の目標を軸にしたDXの進め方

を中心に解説しました。
また、付箋ワークを通して園の現状や課題を可視化し、今後の取組みにつながる 「最初の一歩(改善テーマ)」 を整理する時間となりました。

参加者アンケートでは、約85%が「研修内容が今後のICT化に役立つと感じた」と回答しました。

保育ICTという言葉も知らなかったので、意識することが出来た
「必要性は前から感じていたが、不透明さがあった。少し見通しがたったように思う」
「小さく始めることが大切だと知り、いきなり始めなくてもいいんだと少し不安が解消した
など、導入前の漠然とした不安が解消されたという声が多く聞かれました。


(2)ワーキンググループ・巡回支援

①ワーキンググループ

これまで2回のワーキンググループを実施しました。



ワーキンググループでは、ICT導入前の段階で各園が取り組める準備や検討事項を共有し、どのように業務を見直していくとよいか について認識をそろえるための話題提供と意見交換を行いました。

参加者同士の対話を通じて、自園での進め方をイメージしやすくするための気づきを共有する場となっています。

②巡回支援

これまで公立園4園に対して3回の巡回支援を実施しています。
巡回支援では、各園の業務フローについて丁寧にヒアリングを実施。より具体的な改善提案や導入の進め方について助言を行っています。職員の不安解消や今後の進め方の確認を行うなど、現場に寄り添った支援を行っています。
 

(3)保育ICT検定(中級・上級)の無償提供

実施期間:2025/7/18~2025/12/31


保育ICTに関する体系的な知識を習得し、ICT化・業務効率化を推進できる人材を育成するため、町内の自治体職員および保育施設関係者を対象に「保育ICT検定(中級・上級)」を無償で提供しています。
 

<保育ICT検定とは>

一般社団法人 保育ICT推進協会が提供するオンライン資格制度で、初級・中級・上級の3段階で構成されています。ICTの基礎知識から、セキュリティ・リスク管理・保育DX推進までを体系的に学ぶことができ、積極的に活用ができる人材の育成を目指しています。

 

■中間アンケートから見る支援の効果について■

ICTの導入を本格的に進める前のタイミングで、ここまでの取組を振り返るために参加園を対象に中間アンケートを実施しました。現場職員がどのような変化を感じているのか、実感の声をもとにご紹介します。
 

ICT活用や業務改善の必要性を実感

「支援を通じて、ICTや業務改善の必要性を実感できましたか?」という質問に対し、92.4%が「そう思う」「非常にそう思う」 と回答しました。
支援内容についても、同じく92.4%が「やってみようと思える現実的な内容だった」 と答えており、現場での実践につながる支援として高く評価していただきました。

“自分たちで改善していこう”という前向きな兆し

「“自分たちで改善していこう”という雰囲気が生まれましたか?」という質問には、77%が「そう思う」「非常にそう思う」 と回答しました。
また、「園内でICTや業務の見直しについて意見交換をする機会が増えましたか?」という質問では、92.3%が「そう思う」「非常にそう思う」 と回答しました。
導入前から、現場の職員が課題を共有しながら、主体的に改善に取り組もうとする意識が芽生え始めている様子が伺えました。

現場から寄せられた声

アンケートの自由記述では、次のような前向きな声が多く寄せられました。
当たり前に行っていた業務でも、工夫次第で効率化できることに気づかされた」
課題点が明確になり、今後の改善に生かせる」
「ICT化に取り組む他市町の情報を知ることで共感が得られ、前向きに取り組めた
職員が主体的に質問や相談をする姿勢が育ち、自治体としても心強く感じている

一方で、「運用が始まってみないと難しいと感じる部分もある」といった不安の声も一部挙がりました。今後の導入・運用フェーズに向けて、スムーズな運用につなげていくための継続的な支援が求められています。

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