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保育現場のUSBメモリ紛失事案から考える〜情報漏えいリスクと現実的な対策

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2026年3月、宮崎県内の保育所で、園児に関する個人情報が入ったUSBメモリが紛失する事案が公表されました。氏名や生年月日に加え、一部には要配慮個人情報も含まれており、パスワード設定はされていなかったとされています。

その後、匿名の手紙で「拾得した」との連絡はあったものの、USBメモリは返却されないままです。保護者にとっては、不安の残る状況が続いているといえるでしょう。

USBメモリを同じように運用している現場は、全国に少なくないはずです。今回は、この事案をきっかけに、保育現場におけるUSBメモリのリスクと、現実的な代替策について考えてみたいと思います。

USBメモリには、これだけのリスクがある

USBメモリは小さくて、安くて、誰でもすぐ使える。だからこそ、気軽に使われ続けています。しかしその「気軽さ」の裏側には、いくつかの深刻なリスクが潜んでいます。

① 紛失・盗難リスク

名刺サイズほどの小ささゆえに、ポケットやカバンの中で迷子になります。今回の事案のように、自宅に持ち帰っている途中で紛失すれば見つけるのは非常に困難です。誰がアクセスしたかを把握しにくく、後から追跡することも困難です。

② パスワード未設定による漏えいリスク

USBメモリ本体にはデフォルトでパスワード機能はありません。設定するには専用のソフトや、セキュリティ機能付きの製品を選ぶ必要があります。今回の事案でも、このセキュリティ対策がゼロだったことが、被害を深刻にしています。

③ ウイルス感染の媒介になる

USBメモリを自宅のPCに差し込み、また園のPCに差し込む——この運用を続けると、ウイルスが両方のPCを行き来する経路になります。個人情報の漏洩だけでなく、園内の端末やネットワーク環境に被害が広がる可能性もあります。

④ 「誰が何を持っているか」管理できない

USBメモリは個人が手軽に持てるため、「誰がどのデータを持ち出したか」を組織として把握することが難しくなります。台帳管理をしていない園では、紛失に気づくのも遅れます。今回も、持ち出しから数日後に紛失に気づいています。

USBメモリに代わる手段

では、USBメモリ以外の方法は何があるのか。現実的な代替手段をいくつか紹介します。

① クラウドストレージ(Google Drive・OneDriveなど)

データをインターネット上に保存するため、USBメモリのように物理的に紛失するリスクはありません。アクセス権限を設定すれば、閲覧できる人を制限することもできます。また、二段階認証などを設定することで、不正アクセスのリスクも下げられます。

一方で、設定を誤ると、共有範囲が広がりすぎて情報漏えいにつながるおそれがあります。インターネット環境が必要になることや、職員ごとのアカウント管理が必要になる点もデメリットです。

② 園内共有ネットワーク(NAS・共有フォルダ)

インターネットを使わず、園内のネットワーク上でデータを共有・保管する方法です。外部からアクセスしにくいため、「園内だけで安全に共有したい」という場面には向いています。

ただし、機器の導入や管理にコストがかかる場合があり、設定や運用を誤ると、かえって使いにくくなることもあります。また、園外からアクセスしにくいため、持ち帰り作業や複数拠点での共有には不向きです。

クラウドが使えない場合でもできる対策はある

「うちの園にはそのような環境がない」「すぐに整備するのは難しい」と感じる園も多いと思います。ですが、環境が整っていないからといって、何も対策できないわけではありません。大切なのは、今ある環境の中で、できる対策から始めることです。

① まず「ルール」を作る

技術的な対策より先に、組織としてのルールを明確にしておくことが重要です。たとえば以下のような取り決めがあるだけでも、事故の発生防止・早期発見・初動対応の遅れ防止につながります。

  • 持ち出してよいデータと禁止するデータを分ける
  • 使用するUSBメモリを園管理のものに限定する
  • 利用状況を台帳で記録する
  • 紛失時の報告フローを決めておく

費用をかけなくても、リスクを下げることは可能です。

② USB利用時の保護を徹底する

USBメモリを使うのであれば、まずはセキュリティUSBへの切り替えを検討したいところです。すぐに切り替えが難しい場合でも、パソコンにもともと入っている暗号化機能を使う、保存するファイルやフォルダにパスワードを設定するなど、できる対策はあります。完璧ではなくても、何も対策をしない状態より安全性は確実に高まります。

③ 「持ち帰り作業」を減らす仕組みを考える

根本的な課題は、「持ち帰らないと仕事が終わらない」という現場の状況にある場合もあります。持ち帰りが常態化しているのであれば、USB対策だけで終わらせず、業務量や作業環境、園内で仕事を終えられる体制そのものを見直す視点も必要です。

まとめ

今回の事案から見えてくるのは、USBメモリそのものの危険性だけでなく、持ち出しに頼った運用そのものにリスクがあるということです。

すぐに環境を変えるのは難しくても、今ある環境の中でできる対策から始めることで、USBメモリによる情報漏えいのリスクは減らしていくことができます。

「うちの園は大丈夫だろう」ではなく、「うちの園でも起きうる」という視点で、一度現状を確認してみることをおすすめします。

保育ICT推進協会のサポートについて

情報セキュリティは、「なんとなく気をつける」だけでは対応が難しいテーマです。個人情報の取り扱い、セキュリティの基本的な考え方、リスクを見極めるための視点——こうした知識を体系的に身につけるには、学ぶ機会をつくることが重要です。

保育ICT推進協会では、保育ICT検定を通じて、保育現場で必要なITリテラシーやセキュリティの知識を体系的に学べるプログラムを提供しています。動画視聴+オンライン受検の形式で、忙しい職員の方でも取り組みやすい設計になっています。

また、職員向けのセキュリティ研修も実施しています。個人情報の取り扱いやUSBメモリ・クラウドの正しい使い方など、現場で実践できる内容を中心に構成しています。「うちの園でも研修を実施したい」「職員全体のリテラシーを底上げしたい」という方は、お気軽にお問い合わせください。