保育DX

保育ICT推進加算の責任者ってどんな人?何をすればいいの?役割と進め方をわかりやすく解説

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

令和8年度から新設される「保育ICT推進加算」。その要件のひとつが、ICT活用の責任者を置くことです。

「責任者を置かないといけないのはわかった。でも、どんな人がなるべきで、具体的に何をすればいいの?」——そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、責任者(ICTコア人材)の役割・必要な視点・よくある失敗パターンと解決策まで、子ども家庭庁の保育ICTラボ事業でのシンポジウム発表内容をもとに詳しくお伝えします。

そもそも「保育DX」とは何か

既存の業務を積み木に例えて考えてみましょう。保護者連絡はこう、欠席連絡はこうと、これまでの業務が積み重なっている状態です。

ここにICTを導入するとき、よくある失敗パターンが2つあります。

1つ目は、今の業務の上にICT業務をそのまま積み重ねてしまうケース。業務全体が膨れ上がり、「ICT化する前の方が良かった」という声が出てきます。

2つ目は、既存業務の隙間に無理やりICTを突き刺そうとするケース。業務全体のバランスが崩れ、現場が混乱してしまいます。

私たちが考える「保育DX」とは、こういった対処療法ではなく、「こういう保育を実現したい」「こういう職場にしたい」という目的に合わせて、業務の積み木をゼロベースで組み直すことです。既存の業務・デジタルの業務・新しいやり方を組み合わせながら、業務構造そのものを再構築していく取り組みです。

ICTコア人材の役割とは

このDXを進める上で中心となるのがICTコア人材です。

現場でよく見られるのは、「園長先生がリーダーとして引っ張っている」か「システム操作が得意な職員が担当している」かのどちらかです。いずれもスタートとしては問題ありません。ただし、コア人材として本来求められる役割はもう少し広いものです。

コア人材とは、「パソコンの質問に答える人」ではなく、施設全体がどう良くなっていくかをDXの視点で考え、推進できる人です。設計図を描き、実際に自分でも試してみて、全職員を巻き込みながら組み直しを進めていく——そういった役割が求められています。

コア人材に必要な視点として、私たちは大きく4つを整理しています。

① 社会情勢の視点 園の中だけでなく、社会全体から保育の役割を客観的に捉える視点。

② 現場の視点 何が課題か、どう取り組むかという、現場ならではの視点。ICT推進加算でも「既存職員の中から責任者を設置する」とされていますが、これは現場の視点を担保するためにも理に適っていると思います。

③ 推進体制の視点 全部1人でやるのではなく、周囲をどう巻き込むか、チームをどう構築するか、全職員が主体的に参加できる体制をどう作るかという視点。

④ 情報セキュリティ・リスクの視点 個人情報の取り扱いやセキュリティについての基本的な考え方。完璧な知識よりも「これは危険かもしれない」という感覚を持てることが重要です。

コア人材がいるだけでは、うまくいかない

コア人材を設置しても、保育DXがうまくいかないケースがあります。主な原因は2つです。

「属人化の罠」 ICTの設定が「あの人しか分からない」状態になってしまうと、その人が離職・異動した瞬間にゼロに戻ります。個人のスキルや頑張りだけに依存した運営には限界があります。

「現場との温度差」 コア人材1人が率先して進めても、他の職員が受け身になってしまう。あるいは「DXを進めるのはコア人材の仕事であって、自分たちは関係ない」という雰囲気になってしまう。これもよく見られるパターンです。

また、推進役によってよくある「ずれ」も生じます。

  • 園長先生が主導すると→経営視点が強くなり、現場の課題とずれることがある(例:善意でタブレットを配ったが、使われないまま本棚に眠る)
  • 若手・ICT担当だけが主導すると→現場の課題感はあっても、業務変更の権限がなく止まってしまう

結果として、DXが「誰かの個人的な取り組み」「ICTに関心のある職員だけの自主的な活動」になってしまい、組織としての公式ミッションになっていない——こういった状態に陥りがちです。

解決策は「三層構造」のワーキンググループ

この課題を解決するために私たちが提案しているのが、三層構造です。上下関係ではなく、役割の違いとして3つの層を意識することがポイントです。

担う役割
運営者・管理者(園長等) 方向性の提示・意思決定。「なぜDXを進めるのか」「どんな保育・職場を実現したいか」を明確に掲げる
ICTコア人材 実現方法の検討。どの業務をデジタル化するか、どの順番で進めるか、どんなルールを設けるかを考える
全職員 実際にやってみる。「やってみてどうだったか」の声を上げる

この三層がバラバラに動いてしまうと機能しません。園長が理念だけ語っても実行が伴わない。ICT担当者が単独で考えても園の方向性と合わなければ承認されない。現場は混乱する——このすれ違いが生まれます。

大切なのは、この三層が「1つの検討の場」の中で一緒に話し合うことです。

私たちはこれを「ワーキンググループ」と呼んでいます。この場で方向性を共有し、現場の課題感も運営者やコア人材に伝わり、進め方への合意も取れる。こういった仕組みをつくることが、DXを「仕組みとして動き続けるもの」にする上で不可欠です。

月1回程度の開催を目安に、少人数での実行チームとして機能させていくイメージです。

自治体に求められる役割

こうした取り組みを各園が進めようとするとき、現状は「園ごとにそれぞれが悩み、試行錯誤している」という状態です。この分断された状態では、「うちの園は特別だからDXは難しい」「また一からやり直し」という結果になりがちです。

ここで自治体の役割が非常に重要になります。

往還型研修(自治体単位でのグループ学習)

自治体が主体となり、エリア内の複数園が参加する学びの場を設けることが有効です。「よく知っている隣の園がどうやっているか」という身近な情報は、遠い他県の事例集とは全く違う学びの質をもたらします。比較・競争ではなく、お互いに参考にし合える関係性がポイントです。

この往還型研修がうまく機能すると、各園のワーキンググループの活動とも連動していきます。研修で得た気づきを現場に持ち帰り、「じゃあうちではこうしてみよう」と試す。行き詰まったときに研修で他の園に相談する——こういった好循環が生まれます。

研修への参加は1人ではなく2〜3人でが重要です。1人が帰ってきても「あの先生がそう言ってた」という話になりがちですが、複数人が同じ体験を共有していると、そのメンバーが自然と園内の推進体制(ワーキンググループ)の核になります。

また、研修はグループワークで終わりにするのではなく、専門家からのフィードバックや知見の整理があることで、各園が次のアクションにつながる具体的な気づきを持ち帰れるようになります。

まとめ

保育DXを「仕組み」として動かすために重要なのは、以下の要素です。

現場・保育施設に求められること – 1人で抱え込まず、困り感を発信する – 実践しながら修正を繰り返す – 運営者はDXの方向性・目的を明確に示し、推進体制(チーム)を整える

自治体に求められること – 往還型研修を設計・運営し、複数名参加を促す – 各園のワーキンググループ(検討体制)を後押しする仕組みを作る

「コア人材を1人任命する」だけでは不十分です。コア人材を中心としたチームでの推進と、それを支える往還型研修——この両輪があって初めて、保育DXは持続的に動き続けるものになります。

保育ICT推進協会のサポートについて

保育ICT推進協会では、全国の自治体・法人・保育施設に対して、巡回支援や往還型研修の設計・実施支援を行っています。

コア人材育成の観点では、保育DX推進リーダー検定を実施しています。DX推進に必要な4つの視点や、現場でよくある課題・進め方を体系的にまとめた事前講座と検定がセットになっています。

また、全職員共通のITリテラシー底上げを目的とした保育ICTリテラシー検定もあわせてご活用いただけます。

研修・検定・巡回支援など、ご関心のある方はぜひお問い合わせください。

一般社団法人保育ICT推進協会HP