令和8年度から始まる「保育ICT推進加算」――4つの要件と現場に求められる本当のこと
保育士の皆さん、こんにちは。保育ICT推進協会の三好です。
令和8年度から、新しく「保育ICT推進加算」が設けられます。ICT関連の加算というと「システムを導入すればもらえるもの」と思われがちですが、今回はそうではありません。まだ国からの詳細通知が出揃っていない段階ではありますが、現時点(R8.2月時点)で分かっている情報をお伝えします。
この加算が伝えていること
一言で言えば、「ICTを導入している園」への加算ではなく、「業務の前提として活用している園」への加算です。
この言葉のニュアンスに、この制度のねらいが凝縮されています。
4つの要件
要件① ICT活用の責任者を置く
園内でICT推進の中心となる責任者を1名決めることが求められます。ただし、新しく人を採用する必要はありません。現在在籍している職員の中から任命する形です。特別な資格や形式的な書類も不要とされていますが、「誰が責任者か」を客観的に確認できる状態にしておく必要があります。
ハードルとしては低めに設定されていますが、重要なのはその中身です。この要件が示しているのは、「ICTをみんなでなんとなく進める」ではなく、コア人材を中心に園内の推進体制を整えていくという国からのメッセージと読み取ることができるかもしれません。
要件② 4つの機能を使うこと
ICT化補助金の対象と同じ、次の4機能の活用が求められます。
- 登降園管理
- 保護者連絡
- 記録・計画
- キャッシュレス決済
ただし、令和8年2月時点では「どの程度使えばOKか」という具体的な運用水準はまだ示されていません。最終的な判断は市町村が行う形になりますが、「契約しているだけ」では対象外になる可能性が高いと見ています。いずれ国から一定の水準が示されると思われますが、現時点ではその基準が未確定です。
要件③ 国のプラットフォームと接続する
施設管理プラットフォームと保活情報連携基盤(保活ワンストップ)への接続も要件の一つです。
簡単に説明すると、施設管理プラットフォームとは、これまでExcelで自治体とやり取りしていた給付関連のデータを、ICTシステムから出力したデータで処理できるようにする国の新しい仕組みです。令和9年度以降はICTシステムとの自動連携(API連携)が予定されており、令和8年度は園が手動でアップロードする必要があります。
保活情報連携基盤は、保護者が保活に関するすべての手続きをアプリ1本で行えるようにするものです。保育園のICTシステムへの見学予約通知、自治体システムとの入所申請連携などが、この基盤を通じて動きます。
ただし、これらは保育園が独自に申し込めるものではありません。自治体がまず手を挙げ、各園にアカウント等を発行して初めて使えるようになります。令和8年度は「接続準備・アカウント発行段階」でも加算の対象になることが明確に示されています。「今すぐフル活用」ではなく、準備を始めることが求められている段階です。
要件④ 「ここdeサーチ」を更新する
子ども家庭庁が運営する保育施設検索サイト「ここdeサーチ」の更新も要件に含まれています。
「なぜ検索サイトの更新が加算の要件に?」と思われるかもしれません。理由は明確で、ここdeサーチが施設管理プラットフォームや保活情報連携基盤の基本情報のソースになっているからです。ここdeサーチが更新されていないと、国の新しいシステム全体がうまく機能しません。
さらに、加算の有無とは別に、さっそく令和7年度から報告をここdeサーチで行っていない場合は基本単価の減算(ペナルティ)が適用されます。
この加算のねらい:園単体の効率化ではない
この加算は、「保育士の負担を減らすためにICTを使いましょう」というだけのものではありません。
国が目指しているのは、全国共通のデジタル基盤を整えることです。給付処理のデジタル化、保活手続きのデジタル化、監査・指導のオンライン化——こうした一体的な「国のDX」を支える土台として、各保育園のICT活用が求められているのです。加算はその推進のための仕組みと言えます。
現場・自治体に求められること
ICT責任者は「パソコン係」ではない
ICT推進の責任者について、要件には「ICTの導入・活用について施設内で中心となって取り組み、他の職員の相談に対応する」とあります。これは、パソコンの不具合対応をする人ではありません。
私たちが全国の保育園の導入支援を通じて感じていることですが、ICT責任者に必要なのは業務の流れを読み直し、再設計できる力です。制度の変化や社会の変化に合わせて、園内の業務を柔軟に組み直していける人材——それがこの制度が求めている姿だと考えています。
「加算要件クリア」を目標にしてはいけない
4機能の活用や各種接続が求められる中で、「とにかく要件を満たす形にしよう」という方向に引っ張られると危険です。
形だけのICT活用は、現場への負担増・二重管理・保育の質の低下につながりかねません。制度が変わるたびに振り回されないためにも、「加算が取れるかどうか」ではなく、「この動きを機に業務をどう再構築するか」という視点が重要です。
求められているのは、制度に合わせるだけの対応力ではなく、社会・制度の変化に応じて業務を柔軟に見直し続けられる組織としての力です。
保育ICT推進協会のサポートについて
保育ICT推進協会では、自治体・保育園向けにICT責任者の育成研修や伴走型DX支援を実施しています。子ども家庭庁「保育ICTラボ事業」の採択を受け、埼玉県・宗像市・松前町など複数のエリアで取り組みを進めてきました。
保育ICT検定
動画学習と検定を組み合わせた形式で、ICTの基礎リテラシーから推進リーダーとしての実践力まで段階的に学べます。今回の加算の要件に関わるICT責任者育成にも活用いただけます。
研修プログラム
園内研修・外部研修として、実務に直結したテーマで実施しています。ここdeサーチの更新対応、4機能の運用設計、プラットフォーム接続準備など、制度対応に合わせた内容にも対応しています。
自治体・法人向け 伴走型DX支援
「何から始めればよいか分からない」という段階からご相談いただけます。制度対応だけでなく、現場に無理のない形でデジタル化を根付かせるための継続的な伴走支援を行っています。
ご興味のある方は、保育ICT推進協会の公式サイトよりお気軽にお問い合わせください。
