保育士の皆さん、こんにちは。保育ICT推進協会の三好です。
「保育園のお金の情報が公開されるようになる」——そんなニュースを耳にしたことはありますか?
子ども家庭庁がまとめた資料に、「保育所等における継続的な経営情報の見える化について」という制度が明記されました。名前だけ聞くと難しそうですが、内容は保育士・幼稚園教諭・運営者の全員に関わります。今回はこの新制度を、できるだけわかりやすく解説していきます。
保育所等における継続的な経営情報の見える化について令和7年4月こども家庭庁成育局保育政策課
なぜ、今「見える化」が必要なのか
公式資料には、見える化の理由として次の3点が挙げられています。
- – 職員の給与や人員配置の改善につなげるため
- – 国や自治体が現状を正しく把握し、支援・政策の立案に活用するため
- – 保護者・保育士・研究者など、様々な立場の人に役立てるため
建前としてはこのように説明されていますが、私なりにもう少し「本音」の部分を読み解くと、いくつかのポイントが見えてきます。
お金の使い道をチェックしたい
「国からお金が保育園に入っているはずなのに、先生の給料に反映されていないのでは?」というSNSやニュースの声は、以前からよく見かけます。経営情報を公開することで、そうしたお金の流れの透明性を担保する仕組みを作りたい、という意図があるのだと思います。
データをもとに公定価格を見直したい
これまで国から保育園に払われるお金(公定価格)の決め方は、どこかどんぶり勘定的な部分がありました。「EBPM(根拠に基づく政策立案)」という考え方が国全体に広まっている今、ちゃんとしたデータをもとに補助金を最適化していこう、という流れが強まっています。
事業者間の競争を促したい
保育園ごとの給与水準や人件費の割合が可視化されると、「あちらの園はこれだけ出しているのに、うちは……」という比較が自然と生まれます。それが処遇改善の牽引力になることを、国は期待しているかもしれません。
将来的には監査・指導への活用も視野に
現在、国は保育園への監査をオンライン化する仕組みも整えています。この見える化データを監査・指導にも連携させていく方向も、見据えられていると感じます。
保育士として、何が変わるのか
職場選びの参考情報が増える
今後、「ここdeサーチ」(子ども家庭庁が運営する公式の保育施設検索サイト)で、次のような情報が確認できるようになります。
- – モデル給与(保育士1年目は月何万円、5年目は何万円、など)
- – 人件費の割合(収入のうち、どれだけを職員に使っているか)
- – 職員配置の状況(基準を上回る人員が確保されているかどうか)
就職・転職先を選ぶ際の判断材料が、格段に増えることになります。
処遇改善の交渉がしやすくなる
「処遇改善加算のお金が入ってきているはずなのに、給料に反映されない」という場面は少なくありません。数字として可視化されることで、運営者に対して「このデータを見ると、もう少し人件費に回せるはずでは?」という働きかけがしやすくなります。
運営者・園長先生に求められること
見える化のための報告は、自治体や国が代わりにやってくれるものではありません。法人や園が主体的に行う必要があります。
報告する内容は主に3つです。
- 1. 人員配置
- 2. 職員給与
- 3. 収支の状況
これらを毎年、「ここdeサーチ」のシステムに入力します。
報告の対象となるのは、施設型給付・地域型保育給付を受けている施設です。令和6年4月以降の事業年度が対象で、令和7年8月末までに報告が必要です(年度終了後5ヶ月以内)。
報告を怠った場合は、都道府県からの通知・行政指導・強制調査、最終的には確認取り消しや効力停止という厳しい対応もあり得ます。決して軽く受け止めないでください。
データを正しく読むために知っておきたいこと
情報が公開されると、見る側も「正しく読む力」が必要になります。
福祉分野は人件費比率が高くて当たり前
保育・介護・福祉施設は、「人の手を提供する」ことが本質の仕事です。人件費比率が60〜80%になるのは、業界として正常な状態です。一般企業と安易に比較して「高すぎる」と批判するのは見当違いです。むしろ、その割合が高いほど職員にしっかり還元できている証拠とも言えます。
モデル給与は「設計値」であり、実際の支給額ではない
公開されるのはあくまでも設計上の想定給与であり、全職員が実際にその金額をもらっているわけではありません。一定の差は生じるものです。
数字に出てこない「大切なもの」がある
職員配置の「人数」が基準以上かどうかは分かっても、日々の配置の工夫や現場の雰囲気、人間関係の良さ、子どもとの関わり方といった要素は、数字には表れません。就職先や預け先を選ぶ際に、データはあくまで「参考のひとつ」として使いましょう。
制度のメリットとデメリット、率直に整理すると
保育士側のメリット
- – 処遇格差のある園が可視化され、職場選びの精度が上がる
- – 現在勤めている園での処遇改善の交渉材料になる
運営者・園長先生側のメリット
- – 処遇が良ければ採用力のアピールに直結する
- – ICTや研修制度などの取り組みを外部に発信できる(任意入力項目)
- – 人件費比率のデータを行政との交渉材料に使える
デメリット
- – 年1回とはいえ、報告業務が増える(特に小規模施設への配慮を検討中とのこと)
- – データが一人歩きして誤解を招くリスクがある
- – 頑張っている部分が数値化されにくい(シフト配慮・人間関係など)
- – 報告漏れや記載ミスが指導対象になる
まとめ:情報を「味方」につける時代へ
保育園の経営情報の見える化は、保育業界全体の透明性を高め、現場で働く皆さんの処遇改善にもつながり得る制度です。一方で、数字だけで語れない保育の本質を見失わないようにすることも大切です。
情報は正しく読み、うまく使う。それが、これからの保育士・園長先生に求められる力のひとつになっていくのかもしれません。
保育ICT推進協会のサポートについて
保育ICT推進協会では、こうした新制度の動きも含めて、保育現場のデジタル化・業務改善を総合的に支援しています。
保育ICT検定
保育士・幼稚園教諭・保育園運営者を対象に、ICTリテラシーを体系的に学べる検定制度を設けています。初級から中上級まであり、現場のレベルや目的に合わせてステップアップすることができます。「見える化」への対応も含め、デジタルに苦手意識がある方こそ、まずここからスタートしてみてください。
研修プログラム
園内研修・外部研修を通じて、スタッフ全体のICTスキル底上げをサポートします。報告業務のデジタル化や、ここdeサーチへの入力対応など、実務に直結したテーマにも対応しています。
自治体・法人向け 伴走型DX支援
「見える化」報告への対応、システム導入後の定着支援、職員研修まで、現場の実情に合わせて継続的に伴走するDX支援を行っています。「何から始めればいいか分からない」という自治体・法人の担当者の方も、お気軽にご相談ください。
